2021年12月25日土曜日

行方

 クリスマスの雰囲気を感じたいと思い、寒空の下自転車を走らせる。田んぼの雪はほとんど融けたようだ。ピンと張り詰めた空気が冷たい。

 今夜は雪になるのかな。

 曇った空を写真に撮る気にもなれず、ショッピングモールまで走ってみる。いくらか人は多いもののごった返すほどではなく、クリスマスの賑わいというには少し静かに感じる。一応、クリスマスツリーは飾られていたようだ。

 ふとファンヒーターのスイッチを切った記憶がないことに気づいて焦る。急いで帰る必要があるだろうかと記憶を探る。

 一定時間で自動消火されるはずだから、大事に至る可能性は低いだろう。それでも確認に戻る必要はあるだろうか。こういう時は大抵ちゃんと消火していて心配ないはずだとも思ったりする。

 ソワソワしつつ思い出したのは、出掛けにファンヒーターの近くを通るわけだから消火しないわけがないだろうということ。それすら確証はないのだけど、ひとまず安堵した。

 フリーのWi-fiスポットでアプリのアップデートを済ませ、ぶらぶら歩いていると携帯会社の勧誘に呼び止められる。どこの会社を使ってるのかプランは何かと定番の質問。長く使っていたガラケーが壊れて散々考えてスマホにしたばかりだから変えるつもりもない。彼らも仕事なんだからと少し付き合ったものの他の親子連れを視認するなりサラリとそちらへ移っていった。呼び止めたんだから別れ際に何かひとこと欲しいものだ。

 アウトドア用の安い靴は出ていないかとチェックしつつ食品コーナーへ向かった。そしてクリスマス向けの料理やケーキを横目に見つつ店内一周。

 そう言えば、以前はよく試食コーナーを利用していた。コロナ禍のご時世ですっかり見かけなくなってしまったが、並んだ食品の味がさっぱり想像できない。

 結局、何も買うことなく店を出た。クリスマスの雰囲気も味わえたというほどではない気がする。確認した…という感じだろうか。

 それからいつものコースになっているスーパーに立ち寄ると自転車駐輪のスペースに刃物研ぎの車がドン!と止まっていた。

 そこに止めたい気持ちはわかるけど、自転車利用者が無視されているような気分になる。雪が降る寒空だって自転車でやってくる人たちはいるのだ。

 そんなことを思いつつ少し空いたスペースに駐輪。店内を廻って見たものの特に思い当たるものもない。少し前によもぎ大福を買っていた店なのだけど、最近はアトピーが落ち着きつつあるので必要性を感じない。

 その後、あったかい膝掛け毛布のようなものがないかなぁと思いホームセンターに寄ってみる。大きなコタツ布団のようなものは暖かそうだったけど、大きすぎるので却下…というかそれなら持ってる。

 最後に立ち寄ったスーパーの駐輪場でちょっとびっくり。

 止まっていたのはシルバーの手作り感満載の自転車だった。流線型というほどではないが、太いタイヤと荷台にカゴ、フレームの溶接部分は量産したものとは違う感じがする。市販の自転車なんだろうか。それとも手作り?不思議に思いつつも店内へ。一応クリスマスの気分を味わおうと安いケーキなど買い求めた。

 帰ろうと思い外へ出ると件の自転車の持ち主がいたので思わず声を掛ける。

「かっこいい自転車ですね。」

 すると、照れ臭そうに、そして嬉しそうに返事が返ってきた。

「いやぁ、東京で買ってきたんですよ。」

 驚いて聞き返す。

「わざわざ東京から?仮面ライダーが乗りそうな自転車ですね。」

 仮面ライダーと言ったが、初代ウルトラマンの風情もある。その人は笑いながら答えてくれた。

「そろそろタイヤに亀裂が入ってるんで交換したいんですけど、こんな太いタイヤが手に入らないんですよ。」

 確かにタイヤが太く、少しくらい雪が積もっても安定して走りそうだ。

 それから少し言葉を交わして別れた。近所のスーパーなのでまた会うことがあるかもしれない。

 帰宅してみるとファンヒーターはちゃんとOFFになっていた。

 今年も色々あった。体調も自分史上最悪に悪かった気がする。

 ここがどん底かと初めて思ったのは20年以上前だろうか。そこからもう3段くらい落ちた気がする。一体どこまで落ちるんだろう。

 坂道を転げ落ちながらも2014年からはnoteが気持ちの拠り所となっている。どんなにダメになっても創作活動は不可侵の領域。生きることと同義なのだ。


 少しでも良くしたい。良くなりたい…ズルズルと落ちながらも次こそは、来年こそはと思うことでようやく踏み止まっている感じ。

 年末まではまだ少しあるけど、ひとり今年一年を振り返ってみたりするクリスマスイブである。

2021年の記録


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