2016年4月23日土曜日

都合

 桜の花が終わるのを合図に果樹は花の季節となる。果樹王国は花樹王国へと変貌するのだ。サクランボ・モモ・ラフランス…そしてリンゴと続くことになるのだろうか。白やピンクの花に菜の花やタンポポの黄色が寄り添う。他にも普段雑草と呼ばれ邪魔にされることの多い様々な野の花が咲いて大地を花の絨毯へと染めていく。
 そしてこの時期は山菜シーズンでもある。盆地なので平地は気温が高くなりやすいようで徐々に標高の高いところへと上がっていく。
 フキノトウから始まってコゴミ・木の芽(アケビの新芽)・タラノメはおなじみの山菜。コシアブラを食べるようになったのはいつからだったろう。山に行かないとなかなか採れないし他の若芽と間違いそうな気がするので店で買うことが多い。当地方ではウコギの若芽も食べるということでボクも食べるようになったものの大きさによって苦みが強いことがあるので好んで食べるわけでもない。数年ほど前から食べるようになったハリギリの新芽が実に旨い。タラノメに似ているが柔らかく甘みを感じる。
 今日調べていたらタラノメとハリギリとコシアブラは同じウコギ科ということだ。ウコギ科の植物に共通する旨み成分があるのだろうか。

撮影:2016/04/23

 そろそろ山菜のシーズンということがわかっているのでソワソワしていた。カレンダー的にはまた早いとわかっていても桜の花はカレンダーなどお構いなしに花期を終えた。きっと山菜だってそうだろう…と思った。
 天気予報では今日から数日間は晴れということで自転車を出した。気になっていたタイヤとブレーキゴムの交換は済んでいる。出かける時間が遅くなるのはいつものことで昼前に自宅を出た。北上することになるので近所ではすっかり散ってしまった桜も徐々に花期が逆戻りして行く。ちょっとしたタイムトラベルのようだ。
 追い風だったのか自転車は予想以上にスイスイ走り1時間半ほどで目的地に到着した。桜は丁度花吹雪の季節。コゴミの季節にドンピシャ…と思ったら予想外の展開が待っていた。いつもなら緑色の新芽がモコモコと膨らんで足の踏み場に困るほどなのにどこを見ても茶色く枯れた昨年の葉が残るのみ。フキノトウは花期を終えてトウが立ち、あちこちで小さなフキの葉を広げ始めている。気温が高めで推移しているから場合によってはコゴミも開いてしまったのではないかと恐れていたのに…あちこち探し回ると本当に小さなコゴミを数本だけ見つけることができた。ハリギリの新芽は少し大きくなりすぎている印象。あと数日早ければ適期だったかもしれない。どうにも納得行かないまま、そばにある山桜の花がまだ蕾であることに気がついた。ソメイヨシノが終わるのでもう咲いていてもいいはずではなかったかと混乱する。確かにカレンダー上でのコゴミの時期はあと1週間ほど後かもしれない。最盛期はホンの数日から1週間程度なので逃して後悔することを心配しているのだが、コゴミにだって都合があるのかもしれない。
 釈然としないまま帰路に就く。近所の産直の店に寄って話を聞くとやはり今年は山菜も早いという。仕方ないので200円程度のコゴミとコシアブラを購入した。顔なじみの店員さんの元気がないようなので話を聞くと冬場に雪が少なかったから体力が落ちているのではないかという。それでも1m40cm程度は積もったというからスケールが違う。

 山沿いを走りながら景観の良い場所に自転車を止めて写真を撮って、そばの果樹園で摘花している方に声をかけた。
「この場所の眺めは最高ですね。」
 すると嬉しそうに話を聞かせてくれた。モモの樹の手入れはサクランボより大変だとのこと。サクランボの収穫の経験はあるがモモは未経験だ。ハローワークにサクランボの収穫のアルバイト募集はよく見かけても、モモのアルバイトは見かけた憶えがない。聞くと大きくて鮮やかなピンクの花はアカツキという品種だそうだ。お盆前に出回るおいしいモモだ。少し離れた所に咲いている小ぶりで比較的薄いピンクの花はモチヅキという品種で主に加工になるという。近年はサクランボにもモモにも多くの品種が登場していて把握しきれないほどである。花の時期から違いがあるというのは興味深い話だった。花の時期の観光は地域おこしにならないのだろうかとふと思った。
 その後、公園に立ち寄って遅い昼食。公園にある大きな池では桜吹雪が池を縁取っていた。犬の散歩や釣りをする人、散歩の人など近所の人らしい人たちで賑わっていた。それからホームセンターに立ち寄ってから産直の店へ。いつものお決まりのコースとは言え、この辺りで疲れが出始めるのもお決まりだ。
 産直の店は工事中で中が見えなくなっていたので一瞬「しまった!また空振りか!?」と焦ったものの中ではちゃんと営業していて多くの山菜や野菜を手に取る人たちで賑わっている。今日調達した山菜にはタラノメが足りない。正直なところ、新鮮さが命の山菜の中でもタラノメは筆頭ではないだろうか。山で採りたてのタラノメは天ぷらにするとホクホクと柔らかくクリームのような食感があるのに対してスーパーに並んでいるタラノメはゴツゴツとした歯ごたえがある。味は同じタラノメでも別物のように思えるほどだ。産直の店はどうだろう。たくさん並べられているものを何度も見直してみてもやっぱり食べてみないとわからないのだ。
 産直の店を出て走っていると自宅までもう少しなのにお尻が痛くて仕方ないので休憩を兼ねて書店に立ち寄る。落ち着いたらスーパーへ立ち寄ってやっと帰宅。

 夕飯に山菜を天ぷらにして食べた。
 やはりハリギリの新芽は柔らかくて美味しい。コシアブラの苦味も久しぶり。タラノメはちょっと歯ごたえがあったが仕方ないことだ。他の山菜の個性が強いのでコゴミの存在感が薄くなってしまった。天ぷらでなくおひたしにすべきだったかもしれない。

 気にかかっていたことが一つ解決したので明日は制作に取り組めるだろうか。
 
腕立て伏せ
1回目:105回
2回目:108回

自転車走行距離:約40km

 ボクに残されたのはもはや希望を信じることだけ。

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