2015年12月22日火曜日

逆境


 意外に鉛筆もペンも筆も走る日だった。夕方になって描けた絵を見返したら思ったより面白くない、つまらない絵になっている印象に少し落胆した。思い違いだったということだろうか。それともまだ本調子ではないと言うことか。
 完成と思えるものはなかったが、制作中の5〜6点の絵をスキャニングしてみた。漫画のカット用に描いていたモノはトリミングして配置してみるためだ。アタリを取るとでも言おうか。配置してみて気に入らない場合もあるが、他のコマとのバランスが新しい効果を生み出すこともある。カラーで制作しているので彩色の過程で色のバランスをチェックする必要もある。
 スキャニングした中から1点に彩色してみた。絵が先だったかも知れないが、彼は軽薄なダークサイド。言ってみれば、鋭い洞察力を持った皮肉屋という役回りである。一歩離れた所から斜に構えて世の中を見ている。彼が本気になった所を見てみたいと思わせる存在にしてみたかった。
 元々考えていた台詞はもっと長かった。
「逆境を生かすも殺すも自分次第なんて言うでしょ?でも、活かし方が解るなら逆境とは言わねんじゃね?」
 逆境に直面して落ちこむ人に訳知り顔で諭す言葉をチクリと皮肉る一言。この台詞から彼を諭す人物や或いは誰かを諭す人物などの設定が想像出来る。街角なのか職場なのか、駅のホームなのか…場所によって展開にも様々な意味が生じる。それを手がけてしまうとまた横道に逸れて頓挫しかねないので1コマの断片漫画とした。台詞を短くして設定をより自由にすることで起承転結を見る人の想像力に委ねることとした。彼は周囲の誰かでもいいし、自分自身でもいい。或いは心の中のダークサイドの存在でもいいのだ。



 描きながら短くなった彼の台詞が意味する所について思った。
「活かし方が解るなら逆境とは言わない。」
 つまり逆境そのものが障害ではなく、解決方法が解らないことが逆境を生んでいることに思い至ることが出来れば、無闇に落ち込んでいるより前向きに解決方法を模索した方が良い場合だってあると言うことになる。
 もちろん、逆境と感じられる局面も様々あるので一概に解決への道筋にはならないかも知れないが、もし行動を起こすきっかけになれるなら、皮肉屋の彼の大きな存在意義になるだろう。

 腕立て伏せ:100回

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